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  2016年12月15日    

八木勇樹選手に聞く「初めてのフルマラソンで感じた壁とその先に見えた希望」

2016年7月に旭化成陸上部から独立し、プロランナーとして活動スタートした八木勇樹選手に初めてのフルマラソンの振り返りと今後の展望について聞きました。

ランチップス編集部

早稲田大学陸上競技部から旭化成陸上部という陸上エリート街道を歩んだ八木勇樹選手が、2016年7月に独立とともにフルマラソンへの競技転向を発表。去る11月20日神戸マラソンにて初めてのフルマラソンに挑戦しました。
今回は八木選手に初めてのフルマラソンを振り返っていただき、今後の課題やフルマラソンを走ることで気付いたことをお話いただきました。

初めてのフルマラソンで感じたマラソンの難しさ

神戸マラソンでの先頭争い

ランチップス編集部(以下:編集部)
初めてのフルマラソン、2時間24分30秒(総合2位・日本人1位)という記録でした。振り返ってみていかがでしょうか?

八木勇樹選手(以下:八木)
初めてのフルマラソンは結果的には失敗レースとなってしまいました。
レース開始2kmくらいから辛かったです(笑)。走り出しから体が重く、体感的な辛さとペース感覚が合っていませんでした。
優勝した海外選手とトップ争いの駆け引きをしていたというよりも、自分のリズムを作ることができず、序盤からかなり消耗をしてしまい、開始20km地点ですでにいっぱいいっぱいの状態でした。地面に足の力を伝えることができず、体が全く前に進まないという感覚でした。
様々な失敗要因が考えられますが、一番はメンタル面でした。初めてのフルマラソンで「絶対に勝たなければならない」「期待を裏切ってはならない」と気負いすぎてしまい、ベストパフォーマンスを出せる状態ではありませんでした。

神戸マラソンに向けた練習メニュー

出典:www.facebook.com

神戸マラソンに向けて八ヶ岳で合宿を実施

編集部:
初めてのフルマラソンに向けてどのような準備をしてこられたのでしょうか?

八木;
フルマラソンに向けた準備については実業団で実施していたトレーニングをベースに40km走(3’30/kmペース)を織り交ぜたり、普段実施しているジョグの時間を多めに取るようにして長距離の耐性をつけました。以前はジョグは基本的に1回あたり60分を目安に実施していましたが、フルマラソンに向けては1回あたりのジョグの時間を80〜90分に増やしました。
ただ、フルマラソンという種目は初めてでしたので、練習は手探りの状態でした。

実業団から独立して変わったこと

2016年7月よりYAGI PROJECTがスタート!

編集部:
2016年6月までは旭化成の陸上部に所属していましたが、7月に独立してからどのような環境変化がありましたか?

八木:
実業団に所属していた時には毎日目の前のトレーニングだけに集中することができました。練習する為の環境がきちんと整備されていました。
ただし、実業団に所属している時にはなかなかフルマラソンに挑戦するということが難しい環境でもありました。実業団選手として結果を出さねばならないレースが多くあり、長い期間を使って体を作る必要があり・レース後のダメージが大きいフルマラソンに対して1歩を踏み出せませんでした。
独立してからは、自分で一から環境を作らなければならないので、練習以外のことでもやらなければならないことが増えました。アスリートとしての練習だけではなく、OFFICE YAGIという会社の運営もスタートしました。当初は練習に充てられる時間を捻出するのにも苦労しました。
しかし、独立することで自分と本当に向き合えることができるようになりました。「競技力を向上させていくためにするべきトレーニングメニューは?」「自分の課題を解決する為にやらなければならないことは何なのか?」「自分はこの先どのように生きて行くべきか?」競技のみならず、自分はこの先何をすべきなのか・どうしたいのかという自分の生き方自体を考え直す機会にもなりました。そういう過程を経て、自分の中での信念や夢・目標が以前よりも明確になりました。
独立して良かったか悪かったかという話はよく質問されますが、現段階では残りの競技人生を考えた時に最善の選択をしていると信じています。ここで結果を残せるように毎日を大切に過ごしています。これから先自分の目標を達成したり、夢を実現出来た時にはじめて「独立して良かった」と実感できるのだと思います。

今後のフルマラソンの課題克服に向けたトレーニング方針

出典:www.facebook.com

市民ランナーと共にトレーニングを行うYAGI RUNNING TEAMは、オーガナイザーとしての役割だけでなく自分自身にとっても貴重な練習機会と位置づけている

編集部:
今回のフルマラソンの結果を振り返り、今後はどのように対策を取られていく予定でしょうか?

八木:
初めてフルマラソンを走り、自分の弱点はエネルギー効率の悪さだなと実感することができました。
弱点が分かれば、今まで手探りだった練習メニューに改善が加えられます。
弱点克服のためにも今後の練習は今までのものに比べてもう少しメリハリをつけたメニューを試してみたいと考えています。
具体的には強度は落としてもっと長時間動き続ける練習を加えたり、逆にレースペースの3’05/kmのペースで20〜25kmくらいの距離走を実施したりしていきたいです。
また、今後は本命のターゲットレースで結果を出すためのポイント練習としての位置付けでハーフマラソンなどにも積極的に参加したいと考えています。ある程度疲労を抱えた状態で出場し、そのコンディションで押し切ることを想定したり、後半ビルドアップさせてスピードの変化に耐性をつけたりなど、結果や記録よりもトレーニング効果を意識してレースに参加することもしていきたいです。今までは「結果を出さねば」「これくらいのペースで走れないとだめ」などとレースは大小問わず結果や順位を求めていましたが、今回のフルマラソンで吹っ切れました(笑)

フルマラソンを走って見えた課題や走ることの楽しさ

出典:www.facebook.com

プロ転向記念イベントには多くのサポーターが集まった

編集部;
神戸マラソンを走ってみて感じた可能性や今後の目標についてお聞かせ下さい。

八木;
初めてのフルマラソンはレース中とても辛かったのですが、2〜3日するとまた「走りたい」と思っていました。今はマラソンでも勝てる選手になれると信じてワクワクしています。少年の気持ちに戻ったような気持ちで走ることを楽しんでいます。
今まではフルマラソンは1回あたりのダメージが大きく、今まで自分がやってきた陸上競技とは全く別の種目だと考えていました。ただ、実際に走ってみるとフルマラソンも距離は違えど同じ陸上競技だということが分かりました。
中学時代は3000m、高校時代は5000m、大学・実業団時代は10000m〜ハーフマラソンと今までも陸上競技のキャリアを重ねるごとに新しい種目に挑戦してきました。いずれの節目も競技が変わる(距離が伸びる)タイミングでは、競技に慣れず失敗や試行錯誤を繰り返してきました。しかし課題を振り返りトレーニングを日々改善することで競技適性を獲得し、それに合わせて記録が伸びることも今まで経験してきました。
マラソンという種目において現段階の自分の実力では世界のトップと戦うのは正直厳しいです。しかし、今までのように毎日目標に向かって最善を尽くせば、今日よりも、明日は1歩世界に近づくことができます。
考えるべきは「力がなかったということではなく、これからどうしていくか。」全てが未来の自分を創る経験となります。
東京オリンピックではフルマラソンで世界と戦える選手になり、メダル争いが出来ると信じています。
トップになれないと思ったら僕は引退します。
初めてのフルマラソンを経験し、マラソンランナー八木勇樹に対して今一番期待しているのは、僕自身です。

おわりに

編集部も一市民ランナーとして刺激を受けたインタビューでした。
東京オリンピックでの八木選手の激走に期待したいですね。

今回の取材では実際に八木選手がフルマラソン前に実施したトレーニングや今後フルマラソンで記録を伸ばすために具体的にどのようなトレーニングをしていこうとしているかもお聞きしました。
八木選手は今回のフルマラソンを通じて、自分の弱点を知り、それを克服するためにどのようにトレーニングを改善していくべきかもお話いただきました。
レベルは違えどフルマラソンで自己ベスト更新を目指すランナーに参考になる点があるかもしれません。

また、八木選手は現在ランニングチームも運営しており、競技力問わず参加することができます。
興味を持たれた方は是非一度練習会に参加してみてはいかがでしょうか?八木選手の魅力を生で感じられると思います。
八木選手の動向はホームページやFacebookページでもチェックいただけます。

ランチップス編集部
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ランチップスの運営スタッフがランニングが楽しくなる、トレーニングに役立つ情報を発信します。
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カテゴリ: ランニングを楽しむTips


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