95
  2017年06月07日    

VO2 MAXやAT値測定で変革するトレーニング手法やレースの走り方

VO2 MAX(最大酸素摂取量)やAT値(無酸素性作業閾値)などランナーの能力を決定づける数値を把握することにより、トレーニングやレースの考え方が根本的に変わります。

三田 裕介

現在ランニングを問わず多くのスポーツで生体データの取得による選手の体調管理、トレーニング管理、レースや試合における戦略策定などがトレンドになっています。
ランニングにおいても生体データを取得することにより、トレーニングやレースの取り組み方が変わります。約5分間走るだけで、ランナーが現在どのくらいのタイムでフルマラソンを走れるのかも予測できてしまいます。
今回はランニングに有用とされる生体データの紹介から、それらの数値を活用してトレーニングやレースにどのような変化がもたらされるのかを紹介します。

ランナーの走力を決定づける生体データとは

現在専門機器を使用することによって膨大な生体データを取得することができますが、ランナーにとっては以下が有用な指標と言われています。

心肺機能の偏差値と言われる「VO2 MAX(最大酸素摂取量)」

運動中に体内に取り込める酸素量を数値で表したもので、心肺能力の指標として用いられます。VO2 MAXとフルマラソンのタイムには相関関係があると言われており、自動車で言うところの排気量がこれにあたります。

運動強度の最高値を示す「最大心拍数」

1分あたりの心拍数の最大値(限界値)です。運動強度が高まれば高まるほど心拍数は速くなっていきますが、特定な数値以上は心拍数が上がらなくなります。自身の最大心拍数を知ることにより、トレーニング強度を相対的に推し量ることができるようになります。最大心拍数の70%を目安としたスタミナ養成トレーニングの実施や90%以上の強度を目安としたスピード養成トレーニングの実施などトレーニング強度を相対的に数値化できるようになります。

フルマラソンの適正心拍数となる「AT値(無酸素性作業閾値)」

運動強度が有酸素メインから無酸素メインへと切り替わる心拍ラインを指し、この心拍ラインを超えると長時間運動を継続することができなくなります。心拍数としては最大心拍数の80-85%程度の値となり、AT値(心拍数)をキープすることでフルマラソンではベストパフォーマンスを出すことができるようになります。

スタミナ養成の適正心拍数となる「AeT値(有酸素性作業閾値)」

運動強度が完全な有酸素運動から無酸素要素のエネルギー経路(解糖系)が働き始める心拍ラインを指し、この運動強度からスタミナ養成効果が高まると言われています。無酸素性エネルギー経路が働き始めますが、有酸素メインの運動強度となるため、長時間運動を持続しても疲労の蓄積や息切れは発生しません。ランナーの場合最大心拍数の70%程度が目安となり、この心拍数を意識することで普段行なっているジョギングのトレーニング効果が高まります。


では、専門施設で上記の数値を測定・把握することによってどのような変化がもたらされるのか?続けてご紹介いたします。

強み・弱みを知ることで殻を破ることができる

VO2 MAXの値から心肺能力がどの程度のマラソンタイムの基準なのかを把握することができます。VO2 MAXは数値で表されますが、サブ4ランナーであればは46、サブスリーランナーで62、2時間40分で70と言われています。VO2 MAXを測定することで自身の心肺機能の偏差値をフルマラソンのタイムに換算して把握することができます。
ただ、VO2 MAXを指標としたフルマラソンタイム換算はあくまで心肺能力の観点からの基準になり、心肺能力が高い選手は自己ベストよりも高い数値基準が出ます。そこで、AT値を測定することにより心肺能力に加え、スピード・筋持久力・ランニングフォームなど総合力を加味したフルマラソン予測タイムも算出できます。
VO2MAXとフルマラソン予想タイムを比較し、VO2 MAXが上回る場合は心肺能力よりもスピード・筋持久力・ランニングフォームなどの要素に課題があることになります。
フルマラソンの記録とフルマラソン予測タイムを比較し、予想タイムが上回る場合は「走力が上がっている」か「レースの走り方に失敗している」か「スタミナに課題がある」ことが考えられ、課題を絞り込む手がかりとなります。
マラソンは強みを伸ばすよりも弱点を克服した方がタイムが伸びます。タイムが頭打ちになっているランナーはVO2 MAXやAT値によるフルマラソン予測タイムを測定することにより、自身の課題が何かを見つめ直すことができます。課題を克服するためのトレーニングメニューを組んでトレーニングを実践することにより、ランナーとしての殻を破ることができるようになります。

練習に根拠が生まれ、トレーニング効率を最大化できる

能力測定により各種数値を把握することにより、トレーニング効果を最大限に高めることができるようにもなります。
普段行なっているジョギングも、スタミナ養成という観点から最大限の効果を得ようとした場合は、スタミナ養成に最適な心拍ゾーンとなるAeT値(有酸素性作業閾値)を意識しなければなりません。ジョギングの心拍数は低すぎても高すぎても練習効率が損なわれてしまいます。練習の大半を占めるジョギングメニューこそ心拍数を意識しながら練習効率を高めていくことが非常に大切なメニューです。
その他、インターバルメニューでは最大心拍数、ペース走ではAT値を意識して行うことによって、トレーニング効果を最大限に高めることができます。

トレーニングを振り返る際も自身の走力や体調、課題を数値で評価できるようになり、トレーニングの改善や検証精度が上がります。
例えば気温や湿度が上がれば心拍数も上がるので、気温が低い季節に比べてスピードが出しにくくなります。心拍数が把握できていればスピードが落ちても、体にかかっている負荷は定量的に判断できます。この季節の変わり目は無理をしないことが重要です。
経験豊富なランナーでも、その日の体調や気分によって「実際体への負荷」と「体感的な辛さ」にズレが出ます。そんな時にも心拍数を把握できるとズレを修正できます。
またインターバルトレーニングのレスト時における心拍数の回復が遅ければ、慢性疲労もしくはオーバーペース気味の可能性があり、トレーニングメニューを見直す必要があります。

レースの走り方が変わる

有酸素運動を継続できる最大値となるAT値(心拍数)をキープしてフルマラソンを最初から最後まで走ることができれば、ベストタイムが出ると言われています。
フルマラソンを走る上での適正な心拍数を知ることにより、前半のオーバーペースや余力を残しすぎたゴールということがなくなり、フルマラソンで自分も持てる力を出し切ることができるようになります。特にレース序盤には体が軽く感じたり、オーバーペース気味になってしまいがちです。これはアドレナリン出ている影響で「実際の体への負荷」と「感覚的な辛さ」にズレが出ているために起こる現象です。そんな時でも心拍数を把握できているとレース序盤から適正なペースでレースを走れます。
また、AT値の心拍数を最後までキープできない場合は、スタミナ不足が課題として考えられるので、AT値をフルマラソンの最後までキープできるようなトレーニングを組むことにより、ベストレースができるようになります。

正しい努力をすれば、記録は向上する

VO2 MAXやAT値などの数値を把握することにより、練習効率を最大化させたり、レースでベストパフォーマンスを発揮する走り方が分かるようになります。
SPORTS SCIENCE LABでは今回紹介した数値結果に基づき、ランナー毎に異なる課題を共有し、課題を克服するための方法をトレーニングに落とし込むお手伝いをしています。
自分の課題や成長要素が見つかるとランナーとして新しい世界が見えます。興味のある方はぜひSPORTS SCIENCE LABにお越しください。SPORTS SCIENCE LABでは今回の記事を掘り下げた内容のイベントも定期的に開催しています。ご興味のある方はご参加下さい。

三田 裕介 三田 裕介
高校1年時の国体では高1歴代最高記録の8分13秒の記録を出す。高校3年時の全国高校駅伝では1区で日本人トップ。早稲...
この記事が気に入ったらいいね!しよう最新情報をお届けします
カテゴリ: トレーニングに関するTips


キュレーター紹介
三田 裕介
三田 裕介
高校1年時の国体では高1歴代最高記録の8分13秒の記録を出す。高校3年時の全国高校駅伝では1区で日本人トップ。早稲田大学在学時の2010年度、 史上3校目となる大学駅伝3冠達...

no comments

SNSでランチップスをフォローしよう!